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讃岐弁発電機入札ゲーム

昨日も人と会ってきました。
学生のビジコンには懐疑的ですが、まぁ何か明確な目標と成果を求めるものでもないんだろうな。部活みたいなもんかなぁと。




さて、前々回、前々前々回にいろいろと書きました。
年金日銀月銅コミットメント:
http://udnkui.blog50.fc2.com/blog-entry-823.html
就活英語学割シグナリング:
http://udnkui.blog50.fc2.com/blog-entry-824.html
自分の中ではゲーム理論というテーマで書いてました。
ゲーム理論では「囚人のジレンマ」が超有名。有名すぎてそれ以上知らない人も多いはず、と思ったので囚人のジレンマ以外のゲーム理論における議論を書いてました。
今回は三部作の最終回ということでゲームに焦点をあてて書こうかなと。



囚人のジレンマについては下記をどうぞ。
http://bit.ly/17ITsD(wikipedia「囚人のジレンマ」)

このモデルが言わんとしていることは二者間でお互いにとって最適な選択肢があり、二者とも合理的であっても、必ずしも効率的な選択肢を選ぶとは限らないということ。
これについては、有名な讃岐弁で説明するのが早い。

「かかんきんこん、こんきんかかん」

これを「年賀状のジレンマ」と名付けることにする。
この状況はこの讃岐弁を訳すことで説明できる。

「(年賀状って)書かなかったら来ないし、来なかったら書かないやん」

日本の小学生の共通体験であり、実に端的にゲーム理論における考え方を表した状況である。これについてもう少し整理する。
前提は
・年賀状を出すにはコストがかかるが、年賀状を受け取ると嬉しい。
・年賀状を出すコストよりも受け取った嬉しさの方が大きい。
・相手は転校生でお互いどうするか予想できない。

この時、合理的であれば以下のように考える。
・相手が年賀状を出す場合、自分は出さなくても年賀状が受け取れる。
・相手が年賀状を出さない場合、自分は出すと損である。
・よって年賀状はどっちにしろ出さない方がいい。

小学生が全員合理的であり、毎年全員が転校を繰り返すのならば、全員年賀状を出さない、というのが合理的な結果になる。一切転校はせず、次の年も同じ相手に年賀状ゲームをすることがわかっているのなら結果は変わる。なぜなら、今年出さないことによって相手は来年出さなくなり、永遠に年賀状をもらえなくなる。よって今年出した方が一生を考えた利益は大きくなるからだ。

相手の行動を予想するというのがゲーム理論の特徴。
相手の行動を所与として自分が今以上に高い利益を得られない選択肢をナッシュ均衡という。年賀状の場合は「誰も年賀状を出さない」がナッシュ均衡ですな。

古典的な経済学だと誰も損しないのなら一番ペイオフが大きい選択肢にいきつくという考え方(パレート効率性、パレート最適)だったのが、行動主体の相互作用によって必ずしも効率的な結果にはならないということを示したことが新しかった。





ゲーム理論は具体的にどこに生かされてるか。
まず一番大きなところでは産業組織論や競争政策の分野だろう。
市場原理主義の色濃いアメリカでは競争政策は企業とのイタチごっこにより発展してきた。

正直感銘を受けてしまった事例を。


1960年代初頭のアメリカではGEとウェスチングハウスの2者が電気タービン式発電機を製造していた。これは非常に高価であり、新規参入の脅威はほとんどなかった。また、需要は非常に周期的であり、しばしば受注残が発生していた。
一見暗黙のカルテルが成立する理想的な産業に見えるが 二社とも低い利潤に甘んじていた。
なぜかというと、発注する企業はそれぞれの企業に対し発電機の価格から仕様書とオプション、引渡し時期まであらゆる情報を秘密にして密室で独立に交渉していた為、GEにしてもウェスチングハウスにしても相手が暗黙のカルテルを破って攻撃的に価格を下げたのかどうかがわからなかったからだ。
そこでGEは思い切った方法でルールを変えることにした。
・ どのような場合にも自社がどのような価格設定で応札するかを、契約という形で知れ渡るようにした。信憑性あるものとなるために会計事務所も採用した。
・ 自らの顧客に対し「価格保護」を申し出た。つまりある顧客に対して、明瞭な帳簿価格との関係で低すぎる価格設定をしたときには、ここ数ヶ月間にGE社から購入したすべての顧客に対しても同様の割引をするという義務を負った。
一見これらは顧客の為になるようなサービスのようにみえる。しかし、これらには以下の2つの効果があった。
・ ウェスチングハウスが自社の価格設定を知る事ができるようになった。
・ GEは1社の取引の為に必要以上に価格を下げると後者の義務によりかなり高くつくため、GEが傲慢に価格を下げるようなことはしないであろうとの確信をウェスチングハウスに与えた。
少しばかりの混乱の後、ウェスチングハウスも似たような方策を導入した。これにより、それぞれ相手がどのような価格を設定するかがわかるようになり、さらに片方が取引で売り損なったとしても相手の企業が何をしたのか事後的にわかるようになった。
この結果暗黙の結託が容易に行えるようになり、政府が共謀を可能にする価格保護などの制度を廃止するまで、両者はしこたま利潤を得る事ができた。


こういった企業の行動を先読みするためには理論化する必要がある。その時にゲーム理論を使うというわけだ。



あとは競争入札、オークションやマッチングにおける制度設計にも使われている。
医師・歯科医師のマッチングにもゲーム理論が使われてる。

ここで問題なのは隠された情報をどう引き出すかという部分。
どの2者間においてもオークションなら「ほんとはあなたの評価の方が高かった」マッチングなら「ほんとはあなたが良かった」という結果にならないようにする必要がある。
例えばお互いの入札額がわからない封印型のオークションの場合、最高額で入札した人を勝利者としその入札額を支払うとすると、入札者は勝利した際の支払額を減らすインセンティブを持つ。その操作の結果、自己の評価額が一番高い人間が勝利者になるとは限らなくなってしまう。しかし、最高額で入札した人を勝利者とし、勝利者は二番目に高い入札額を支払うとするとそうしたインセンティブはなくなり、自己の評価額以外で入札するインセンティブはもたなくなる。詳しい証明は長くなるので省略するけど、気になる人は自己の評価額と入札額と自分以外の入札者のうち一番高い価格を関数として場合分けすると証明できる。(第二価格・封印型オークション)

マッチングに関するアルゴリズムに関しては長くなるので知りたければ下記サイトにどうぞ。
『ゲーム理論』とマーケットデザイン(VCASIフェロー・スタンフォード大助教授 小島武仁) http://bit.ly/bdmjPp


ほんとは歩合給、成果報酬などのインセンティブ報酬についても書きたかったけど長くなりすぎるのでまた今度にします。行動を把握しきれない人間をどうコントロールし努力を引き出すかとか、リスクを経営者と従業員でどうわけて
面白いと思ったことがありすぎて書ききれませぬ。




個人にとってゲーム理論や経済学はあまり役立たないかもしれない。
市場は四大文明のころから見られるのに対し、経済学が興ったのは17世紀になってからだ。それに未だにバブルの発生と崩壊は予想できないし、所詮現実を理由づけしてる学問にすぎない。教科書を開くと無駄にアルファベットを使うくせに関係式以上の意味のない数式が山ほどでてくる。ほんと意味無いと思う。
そしてゲーム理論についても、これが確立されたからといって何かが生まれたのではなく、所詮考え方のフレームワークが増えたにすぎない。上記に書いたようなことも理論なんかなくてもその都度考えればわかることだし、そもそも何回も繰り返していればなにが一番なのかは学習する。なにしろ理論なんか知らない豚でもOPECも結局同じような戦略行動をとる。

そして学問としてもまだまだ発展途上であることも確か。
ゲーム理論はあくまで合理的な主体を扱うが、現実の個人はあまり合理的ではない。そこを切り開こうとしてるのは行動経済学だが、正直まだまだだろう。マクロでみても結局サブプライム危機やリーマンショックは防げなかったし、複雑系で膨らみ続ける将来を予測することなんてどんなに学問が発展しても無理だろう。

でもやはり、社会にとって経済学は有用であると思う。
まず、学問一般に言えることだけど、理論化することで物事に対する一貫した見方をすることができる。これは政策判断にはかならず必要だし、複雑な社会を解きほぐす助けにもなる。そして学問だから馬鹿でも勉強すりゃ使える。
そして経済学が扱う生産や交換、消費などは社会活動の基本であり、業種・業界から土地や時間を越えてまで経済学的な考え方が応用できる。人がいるところには必ず市場があるのである。(とある本にのってた古代日本の氏族の動きの経済活動の視点からの分析には結構衝撃をうけた。)
まぁ学問を発展させるのは頭のいい人にまかせつつ、俺は片隅でおこぼれにあずかってそれを還元できればなと。

ゲーム理論三部作終わり。





うむ、長い。
書くんにめっちゃ時間かかった。
でも経済学部出身者でもゲーム理論あんま理解してない人って結構いるんだよなぁ。もったいない。


あ~、はよ香川帰ってうどん食いたい。
ついでにアートフェス巡りもしよう。
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プロフィール

udnkui

Author:udnkui
香川県出身。
京大大学院の博士院生。医科歯科卒。jazz好き。神社巡り好き。独学での法律、政治、経済、経営等社会科学の基礎知識と国会議員、外資投資銀行(米・英・欧)、学際系研究室などでのインターン経験があります。
興味事項:社会、科学、自然、芸術
日々精進してます。

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